IKU   HIDAKA                                                         日高衣紅

昔、骨董品店で働いていたことがある。寺社で頒布された御札、古書店で手にした版本や古新聞のインクのかすれやにじみを見るのが好きだった。人の手によって摺られた痕跡、あるいは機械のエラーによって生じるフラットでない紙の上の様相に、印刷に携わった人の存在やその場所の歴史を感じ取ることができるからだ。

 今でも骨董市や古書店に行き古い版本や印刷物を収集している。ときに好奇心に駆られてそれらが印刷された場所に赴き、その印刷物にどのような人が関わり、どのような歴史があったのかを調べたりする。このようなフィールドワークが今の私の制作に繋がっている。

 収集あるいはリサーチした印刷物をモチーフに、シルクスクリーンでインクを摺り重ねていくのが私の作品の制作手法である。印刷物が辿った運命を追体験するように数百層のインクを手で摺り重ねていく。インクの重なりと次第に崩れていく造形によって、その印刷物と共にあった人や場所の記憶を表そうとしている。

2012年 多摩美術大学 絵画学科 版画専攻 卒業

2018年 筑波大学 芸術専攻 博士前期課程 修了

2016-2017年 国立台湾藝術大学 版画研究室

現在 筑波大学 芸術専攻 博士後期課程 在籍

2015年 第40回全国大学版画展 優秀作品賞 町田市立国際版画美術館収蔵

2021年 クラクフ国際版画トリエンナーレ(International Print Triennial 2021 in Krakow)グランプリ(Grand Prix MTG 2021)受賞        

2015年 第83回版画展 東京都美術館 東京 〈入選〉
2015年 第40回大学版画展 町田市立国際版画美術館 東京 〈優秀作品賞〉
2016年 中華民国第十七回国際版画ビエンナーレ 国立台湾美術館 台湾 〈入選〉
2016年 第15回南島原市セミナリヨ現代版画展 南島原市ありえコレジョホール 長崎 〈入選〉
2016年 版の上にも7年 文房堂 東京 (以降2019年まで毎年出品)
2017年 金門国際版画邀請展 金門文化局展示ホール 台湾
2018年 第15回DC展 つくば美術館 茨城 (以降2019年まで毎年出品)
2019年 熊谷晴子/日高衣紅 二人展 川口市立アートギャラリーアトリア 埼玉
2019年 第5回ゲタ箱展 大田原市芸術文化研究所 栃木
2019年 無闇展 Art lab Melt meri 東京
2021年 クラクフ国際版画トリエンナーレ2021 ノバフタ文化センター ポーランド 〈大賞〉
2022年 UNMANNED 無人駅の芸術祭/大井川2022 大井川鉄道青部駅、静岡 (アートユニットiiとして出品)

2022年 日高衣紅個展 ギャルリー東京ユマニテbis 東京

2022年 日高衣紅成果展 南島原市アートビレッジ・シラキノ 長崎

2022年 IKU HIDAKA / RELATIONS Centrum Gallery ポーランド クラクフ

2023年 神戸アートマルシェ2023 第8回公募展「Artist meets Art Fair」受賞による展示、オーディエンス賞受賞